ムジカノーヴァ2003/7

メディア掲載情報

小倉多美子氏

川嶋仁には、デリケートな情緒への感覚と、陰翳ある表現へと実現するテクニックとを備えたピアニストであり、当夜演奏されたさまざまなタイプの曲に託された詩情を浮かび上がらせた響きこそ、その資質を物語るものだろう。作品個々の詩情の本質を捕らえるセンサーからは、ショパンの”美しさ”の多面性が鮮明に生み出されたのである。楽器操作も含め演奏家として確かな姿勢を備えた若手だが、ふと深い呼吸の後に現れる深々とした輝きに、その秀でた感性が拓く豊かな未来を感じたのは私だけではあるまい。

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